25年前のエンディングノート

私が最初に書いたエンディングメッセージは、25年ほど前のこと。娘が1歳になる前のことだった。
娘を出産して1カ月もたたないほど、千葉県に大きな地震があった。幼子を抱えているときの地震は怖い。産休が明けても、ずっと不安は消えなかった。保育園に預けた後、職場で地震にあって、この子に会えなくなったら…。将来この子に伝えるべき初潮や初恋、異性とのことも全部伝えられない。相談にものってあげられない。どうしよう…。
このままでは、自分が命を落とした時に後悔するだろう。「いま、何をすべきか」そう考えたときに思いついたのが、いまでいうところのエンディングメッセージだった。当時私は雑誌の編集者で、遺言などの知識などまったくなかったが、本当に必要だと思って書き始めた。
メッセージは、毎年の誕生日に読んでもらえるよう「1歳になった○○ちゃんに」という手紙形式にして、かわいい絵のついたノートに書いた。「今は何を勉強しているの?お友達とどんな遊びをしているのかな?」というものから「初潮がきたら、おばあちゃんやおばちゃんに相談しなさい。お買い物も手伝ってくれるよ」など、たくさんのことを書き綴った。毎晩毎晩、少しずつ、涙を流しながら書いていた。
この数年、エンディングノートの上手な活用法のセミナーをかなりの数お話しさせていただいているが、セミナー会場で参加者に聞いてみると「買っても、書けない」というシニアが多い。理由はいくつかあるが、多いのが「辛くなるから」だ。その気持ちはよくわかる。
当時30代の私でさえも、自分の死と向き合って、娘や夫に伝えるべきことを書き残そうとするとさまざまな思いが巡って、切なくなって何度も筆が止まった。20歳になるまでのメッセージを書きあげるのに半年はかかっただろうか。時間がかかった分、書き上げてとても安心したことを覚えている。そして「生きているうちに、もっともっと子どもたちといっぱいおしゃべりをしよう。思いを生の声で伝えていこう」と。自分の死後のことを書くことで、これから生きることを大切に思えるようになった。
自分の体験を通じて、死というものが現実味を帯びてくるシニアが、書くのをためらってしまう気持ちを察することはできる(人によって感覚は違うとは思うが)。
だからこそ、その気持ちを認めつつ、寄り添いながらも「人生の旅を終えるときに後悔しないために、伝えたい思いを書き始めよう」と多くの人に伝えたい。
自分で作ったメッセージノートを書きながら、いま、再び感じている「これからの人生を大切に生きていくための力がわいてくる」のを多くの方にきっと実感してもらえると思うから。

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